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斎藤彦麻呂『傍廂』前篇巻之一「小女狼をころす」より |
娘と狼 |
石見国那珂郡浜田の村里で、悪い狼が狂い歩き、多くの人を悩ました。そのせいで、夕暮れには人の往来もまれだった。 そんななか、ある農夫が、十二三になる娘に言いつけて、酒を買いに行かせた。 買って帰る道で、娘はかの狼に出遭った。 狼は娘を喰おうと襲いかかる。娘は逃れようと、徳利を持った手を後ろに差し出すような姿勢で駆け走る。その場の勢いで、徳利が飛びついてきた狼の口中に深く入って、抜き差しならなくなった。 狼は、たけび狂って死んだ。 娘は、酒徳利を狼に取られて、なすすべなく泣いていた。その声を近くの者が聞きつけて、家まで送ってやったそうだ。 |
あやしい古典文学 No.1685 |
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