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『古今著聞集』巻第第十六「縫殿頭信安強盗を制せんが為…」より |
備えあれば… |
縫殿頭(ぬいどののかみ)信安という人がいた。 『最近、世間に強盗が流行っている。我が家も襲われるかもしれない』と思い、ある工夫を考えついた。『強盗が足を滑らせて転ぶように』と、小竹の茎の節間の部分をたくさん切り出して用意し、日が暮れたら家の各所にころころと散らばして、朝になると回収した。 ある夜、上司の公卿の家の近所で火事があり、信安は慌てて駆けつけようとして、竹に滑って転倒し、腰を打撲骨折した。年寄だから怪我の度合いもひどくて、ずいぶん日数を経てやっとよくなった。 周到に準備したはずが我が身に災いしたとは、皮肉なことだ。 |
あやしい古典文学 No.1693 |
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