木崎タ窓『拾椎雑話』巻二十四より

氏神の使者

 琵琶湖岸の漁民たちが網を引いて、丈三メートル余りの大鯰を獲った。
 ある物知りが、
「この鯰は尋常でない。氏神の使者に違いない」
と言ったので、みな怖れた。

 誰もが畏れ憚る中で、一人がその鯰を貰い受けた。
 それを密かに蒲鉾にして、京都へ持っていって売り、だいぶ儲けた。
あやしい古典文学 No.1711