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平賀蕉斎『蕉斎筆記』巻之二より |
苦潮 |
この九月のこととかいう。 伊豆国の沖に日ごと「苦潮」が満ちて、大不漁となった。 その潮は煤色でたいそう苦く、まともに浴びた漁師は即死し、そうでなくとも全身に悪性の瘡を生じた。たまたま口に入った飛沫を飲んでしまった者は、ただちに腹痛に襲われた。 沖合では蝦やそのほかの魚類の死屍累々で、それが海岸に流れ寄るとのことだ。 現地の代官から城下への報告の写しという文書も見た。文言こそ違え、上記のとおりのことが書かれてあった。 |
あやしい古典文学 No.1735 |
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