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石塚豊芥子『街談文々集要』巻七「以小刀切腹」より |
切腹男 |
文化二年の末のこと。 日本橋通一丁目の露店で、三十八文の小刀を買おうとする者がいた。 「この小刀はよく切れるか」 と尋ねると、売り手は、 「すごくよく切れます。首でも腹でも切れますぜ」 と答えた。 買い手は、 「おれの腹の中に狐が二三匹いる。その狐を切るんだ」 と言いざま、小刀を腹に突き込み、掻き回して臓腑を掴み出し、その場で死んだ。 ただちに自身番に届け出て、検使が行われ、数日のうちに事件は片付いた。 この腹切り男は、日本橋通四丁目の釣瓶鮓屋の裏に住む大工で、藤七という者だという。 乱心したのだと思われる。 |
あやしい古典文学 No.1749 |
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