阿部正信『駿国雑志』巻之二十四下「山吹猫・出世猫」より

山吹猫・出世猫

 駿河の府中城の御庭に、「山吹」という名の老猫が隠れ棲んでいる。
 たまたまこれを見かけた者は、かならず瘧(おこり)を病む。

 同じ府中城で、大手御門内の河内屋敷には、一匹の黒猫が出没する。
 たまたまこれを見かけると、幸運がある。青雲の志ある者は、かならず立身出世する。
 名づけて「出世猫」という。
あやしい古典文学 No.1757