青葱堂冬圃『真佐喜のかつら』九より

坊主になるな、魚喰え

 仙台藩の侍 杉原新左衛門の槍持ち某は、あるとき古い書物を、わずか銭十五文で買い取った。
 その書物を見た新左衛門が、いかにも古くて面白いと思って、目利きの人に鑑てもらうと、一休和尚の筆だとのこと。
 そこで、仙台侯に差し上げた。
 仙台侯から京都大徳寺へ遣わされ、なおまた目利きを頼んだところ、真筆にまぎれもないと、鑑定書付きで返されてきた。
 よって、新左衛門には御刀一腰・馬一頭に時服を添えて下され、槍持ちには金百両を賜った。

 その書物の中に言う。
一、坊主になるな、魚喰え。
一、地獄へ行って鬼に負けるな。
一、大食をしてくらせよ。
一、念仏は申さずとも遊興をするな。
一、仏法は空おかしくばこの歌を見よ。
 皆人に欲は捨てよと勧めつつ後で拾うは寺の上人
あやしい古典文学 No.1764