古賀侗庵『今斉諧』巻之三「食筍有娘」より

処女懐胎

 長州長府になんとかという寺があった。本堂の前に竹林があって、住職は時々竹に向かって放尿した。
 やがてそこに、筍が生え出た。固くて太い筍だった。住職は怪しく思い、引き抜いて川に棄てた。
 それを川近くに住む処女が拾って、煮て食った。すると、なんだか男と交合するような感じがして、たちまち妊娠した。
 父母は、娘が男と姦通したものと疑い、厳しく問い詰めた。娘はやむを得ず、妊娠に至るまでの経緯を語り、やがて一男子を出産した。
 幾年かの後、かの寺の住職は、筍を食って生まれた子の話を伝え聞いた。
 その子を呼んで対面したところ、目鼻立ちが住職そっくりだったので、我が子であると確信し、もらい受けて寺の小僧にした。

 『今昔物語集』の「東の方へ行く者、蕪を娶ぎて子を生む語」に酷似した話である。
あやしい古典文学 No.1767