野田成方『裏見寒話』(付録)より

野槌

 マムシが歳を経て「野槌」となる。体の太さは米つきの杵くらいで、身の丈は短い。

 野槌は、草を分けて飛んでくる。その速さは何にもたとえようがないほどだ。
 手足がないので、飛ぶ鳥を捕らえると、生きたまま丸呑みにする。
 走る獣を追って、至近距離になると、尾を上げて、目にもとまらぬ速さで打ち倒す。
 人を獲るにも尾で打つし、狐・狸・兎のような小動物を獲るときも同様である。
あやしい古典文学 No.1780