岡村良通『寓意草』上巻より

泣き叫ぶ老人

 奥州の信夫の里に、米沢から落ちぶれて来た人がいた。老いるまで気性が激しく、剛毅で厳格な人だった。
 しかし、八十ばかりで死期を迎えたとき、声をあげて泣き叫んだ。
 どうしたのかと人が問うと、
「敵の槍に貫かれ、首は斬られて人手に渡り、骸は馬の皮に包まれて故郷に帰るべきところ、むなしく病んで死ぬのが口惜しい」
と言って、ただ泣きに泣いて絶命したのだった。
あやしい古典文学 No.1791