本島知辰『月堂見聞集』巻之七より

獣鳥

 正徳四年四月十二日、奥州しゆ原山に獣鳥が出た。
 頭から尾の先まで二十メートル近く、全体が亀甲で覆われていた。腹はいわゆる蛇腹の形、首は鳥のようで、耳の長さ一メートル半。
 尾は長さ四メートルあまりで、先の半分は鋭い剣のようだった。ほかに小さい尾が九つあり、これらもすべて剣のように尖っていた。
 体の左右に翼があり、足の長さ三メートル半、胴回り一メートル近く。吐く息は火焔のごとく、鳴く声は雷鳴のようだった。
 鉄砲十挺で撃ち留めたが、見物に来た男女は毒気に当たり、病死する者が多かった。

 このこと、江戸へ急ぎ報告に及んだという。
あやしい古典文学 No.1801