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滝沢馬琴編『兎園小説』第九集「蓮葉虚空に翻るの異」より |
蓮ノ葉の奇事 |
三州渥美郡鷲田村にて、乾してあった蓮ノ葉が自然に虚空に翻り、白鶴が遊飛した奇事についての、村人らの訴文。 以下のとおり。 * 当村の百姓 三右衛門と磯八が、六月十一日、菱池にて蓮ノ葉を採り、村の瓦野というところに干しておきました。 翌十二日の朝十時ごろより、葉が一枚、二枚と、晴天で風もない空へ上がりはじめました。正午ごろには、およそ百五六十枚の葉がすべて上がり、中にはまた落ちてきたものもありましたが、大部分は虚空を上り続けて、次第に小さく二三寸くらいに見え、しまいには見えなくなりました。 上る蓮ノ葉の中から、白鶴一羽が下りてきて、輪を描いて飛び、また虚空に上りました。次第に小さく小鳥ぐらいに見え、その先は見分けられませんでした。 また、ほどなく東方から白鶴三羽が飛来して、先の白鶴と同じところを旋回し、うち二羽は東方へ飛び去り、もう一羽は虚空へ上がってゆきました。 あまりに不思議のことゆえ、ご注進申し上げます。以上。 文政八年七月六日 鷲田村組頭 藤兵衛、同 彦六、庄屋 助六 |
あやしい古典文学 No.1803 |
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