喜多村信節『ききのまにまに』より

オサキ狐

 嘉永六年五月ごろのこと。

 牛込原町に、そのころ大変流行した占者がいて、毎日金二両ずつも稼いでいた。オサキ狐を使っているとのことだった。
 その狐が子をたくさん産んで、占者は始末に困った。
 子狐を伝通院あたりに捨てたところ、近辺の者らが取り憑かれて、さまざまな妄言を口走った。

 噂がその筋に聞こえ、目明しが占者のところへ下僕として潜入して、ほどなく占者は捕らえられた。
 糾問の結果、狐は近くに住む浄瑠璃太夫からもらったと白状したそうだ。
あやしい古典文学 No.1809