反古斎『怪異前席夜話』巻之三「匹夫の誠心剣に入て霊を顕す話」より

鈍刀の奇瑞

 中国に剣匠が少ないことは、 『遵生八牋』にも「鋳剣の術伝わらず。典籍またこれを載せず。ゆえに今剣客なく、世に名剣少なし」と書かれている。
 伝説の剣匠である干将・莫耶(かんしょう・ばくや)に匹敵するかはいざ知らず、我が国には往古より、刀鍛冶が数知れず現れた。その中には、技巧の妙を極めた者もはなはだ多い。

 むかし京都に、関なにがしという神わざの刀鍛冶がいた。 昆吾石(こんごいし)を用いて精鉄を鍛えた刀は、石を切ることあたかも泥を切るがごとくで、王侯貴人が争って買い、百金も惜しまなかった。
 その関なにがしの弟子に、佐伯好隣(さえきよしちか)という者がいた。若い時から放蕩者で、宋玉(そうぎょく)という古代中国の美男詩人の人となりを慕い、隣家の女を誘惑したかと思うと遊里の女に溺れ、一度として真面目に刀鍛冶の技に打ち込むことがなかった。それゆえ、師の教えを受けながら、いまだその真髄を体得できないでいた。
 ある日、一人の下僕ふうの男が来て、好隣に会って言った。
「私は、山崎の片田舎の農家に雇われて、力仕事をしている者です。こちらの先生の鋳剣が神わざであると聞き、ぜひ一振り欲しいものと、長年望んでまいりました。できましたら、その値段を教えてください」
 好隣は笑った。
「わが師は、たとえ王侯から求められても、一年後でなければ献ずることがない。おまえのような者が所望するところではないのだ」
 しかし男は、
「そうかもしれません。とはいえ値段はいくらですか」
としつこく問う。そこで好隣は、冗談のつもりで言った。
「おまえ、そんなに欲しいのか。ならば、十両の金を持ってきたら、師に頼んで、剣を売ってやろう」
 男はこれをまともにとり、
「私は卑賤な作男で、今、十両の金はありません。しかし懸命に働き、年を重ねれば、用意できないことはありません。その約束、きっと守ってください」
と言って、帰っていった。

 それ以来、男は、耕作の合間に山で薪を採り、野で落穂を拾い、あるいは早朝から茅を刈り、夜なべで縄をなうなどした。苦労をいとわず力の限り働いて、三年後ようやく十両の金を蓄えることができた。
 男は急いで好隣のもとへ金を持参し、剣を乞うた。好隣は今さら、その場限りの戯れ言だったと断ることもできず、やむなく欺いて言った。
「約束の剣なら、わが師はすでに鋳ち終えておられる。まだ砥ぎあげてないから、明日また来てもらいたい。必ず与えよう」
 そうしてなんとか帰したものの、さてどうしたものか。師に告げて叱責されるよりはと、密かに市場に行って鈍刀一振りを買い求め、粗末さを繕い、砥ぎなおした。
 翌日、男がまた来たので、偽りの刀を与えると、男は望みが叶ったと大喜びし、厚く礼を言って、十両を渡して帰った。
 それからというもの、男は刀を肌身離さず、しばしの間も忘れることなく、無上の宝として秘蔵した。

 さて、その後の好隣だが、女色に溺れる癖はいっこうに止まなかった。ついに師の怒りに触れ、さまざまに詫びたけれども許されず、追い出されて、しかたなく郷里の豊後国蒲戸ヶ崎に帰った。
 好隣の親は富裕な農民で、立派な屋敷とたくさんの田圃を所有していたが、好隣が戻るとすべてを譲り与え、みずからは剃髪して仏門に入った。
 好隣は、近村の豪民何某の娘を迎えて妻とし、夫婦仲は睦まじかった。放蕩は陰をひそめ、堅実に家を治めて、生業を守った。
 ある日、好隣は用あって朝早く出かけ、道の傍らの木陰に一人の少女が佇んでいるのを見た。姿かたちの上品な美しい娘だが、なぜか裸足で、歩くのに難渋したものらしい。
 好隣は思わず声をかけた。
「うら若い乙女が、供人もなく早朝に一人歩くとは、何かあったのですか」
 女は振り向いて、ため息をついた。
「通りすがりのお方が、なぜわが心の憂いにお気づきになったのでしょう。親切なお尋ね、いたみいります」
 いかにもわけがある様子だったから、近づいて親身に尋ねた。
「あなたは何処から来たのですか。齢はいくつですか。心の憂いをお話になれば、力になりましょう」
 女はしおれていた顔を上げ、あふれる涙を拭って、
「嬉しいお言葉…。あなたさまは通りすがりの他人ではなく、わたしにとって天の助けです。何を隠そう、わたしは当国西の浦の漁師の娘で、齢は十八になります。幼い時に父母を亡くし、伯父に養育されましたが、伯父の子が博打狂いで身代すべて使い果たし、先ごろ伯父が亡くなると、わたしを金持ちの何某の家に価十金で売って、その金を持って行方知れずになりました。売られた先の本妻は嫉妬心が強く、わたしを日夜罵り、打ち叩くばかり。その苦しみは言葉に言い尽くせません。たとえ深い淵に身を沈め、野辺に身体を棄てるとしても、この苦しみよりもましだと思い、夜に紛れて逃れ出たのです」
と語り、さらに涙をこぼして泣いた。
「それはお気の毒な…。先に約束したように、心の限り力になりましょう。さいわいわが家が近くにあります。遠慮なく立ち寄りなさい」
 好隣は女の手を取って、自分の別荘に連れてゆくと、
「ここは普段人が出入りすることもないから、安心して泊まれます」
と、食事を用意させ、細かく気を配って世話した。
「思いがけずあなたさまに出逢い、これほどの同情をいただこうとは…。心に刻んで、この大恩をけっして忘れません」
 愁眉を開き、笑みを浮かべた女の姿は、西施や蔡文姫など伝説の美女の喜びもかくやと思われた。もともと好色な好隣は心惑い、欲情を抑えられず、その夜は女と寝屋を共にして、夢見心地で過ごした。

 それからの好隣は、女のことが片時も忘れられなかった。本宅には少しの間もおらず、夜ごと別荘に行き通った。
 本妻は賢女であったが、睦まじかった夫婦仲がすっかり疎遠になり、夫の顔色が日々憔悴していくのを怪しみ、ある日、厳しく問いただした。
 好隣がやむをえず愛人のことを語ると、妻は妬みの色もなく、
「色情は理性を斬る斧だとか…。色にふけって滅びた者の例は、古今に数多くあります。まして相手は、野原をうろつく浮気女ではありませんか。出自も定かでないような者に惑わされなさいますな」
と、真心から諫めた。
 しかし好隣は聞き入れず、かえって嫉妬だと罵って、妻をうとましく思い、いよいよ女のもとに通った。そうするうち、いつしか精髄が枯れ果て、肌肉もしだいに痩せ衰え、重く病んで、別荘に打ち臥したまま何日も本宅に帰らなかった。
 妻は不安が募り、
「そもそもどれほど妖艶な女が、夫をここまで迷わせるのだろうか。そっと行って見て来よう」
と、ある夜、女中を連れて密かに別荘に行ってみた。
 門は固く閉ざされていたが、家の中の灯火が微かに見える。月の光のさす庭の垣根に犬の破った穴があるのをさいわいに、くぐり入って様子を伺った。しかし、障子に人影のようなものはあるけれど、話し声は聞こえてこない。
 忍び足で軒端に近寄り、隙間から中を覗くと、夫の好隣は寝床に伏し、深く熟睡している様子だ。かの妾と思われるか弱そうな女が傍らにいて、好隣の顔をつくづく眺め入っていたが、にわかに優美な相貌が変じて煤のごとく黒み、両眼輝いてぎらぎらと室内を照らした。艶やかに結い上げた髪は、一変しておどろに乱れた。巨大な腹、縮んだ首、水掻きのある手足は蛙に似ていた。
 化け物は、舌をのばして好隣の全身を舐め回した。その恐ろしさはとても言葉にならない。妻は総身の毛が逆立ち、魂も消えんばかり。必死に外へ走り出て、女中にしかじかと語ることもせず、足に任せて本宅に逃げ帰った。
 それから妻は夜が明けるのを待ちかねて、家の執事を呼んで申しつけた。
「駕籠を下男に担がせて、別荘の夫を連れ帰っておくれ」

 執事らは、大急ぎで別荘に向かった。
 好隣は、病に臥して以来、女がいっときも傍を去らず、四六時中肌身にまとわりつくので、さすがに少し厭になっていた。しかし、身体が弱って歩くこともままならないから、本宅へ帰ることもできない。
 どうしようもない状態のところに執事が迎えに来たから、大いに喜んで帰ろうとした。それを女はかたく引きとどめ、
「あなたの病気は、外の寒さに侵されたのがもとですから、道に出て再び風に当たれば、大ごとになります。ずっとここにいて保養なさってください。わたしが心を尽くしてお世話します。平生いただいている恩愛の万分の一でもお返しさせてください」
と、玉のような涙を流しながらかき口説く。
 さすがに好隣も思い切れず、別れるに忍びないさまだったが、執事が声を荒らげて女を叱り遠ざけ、無理やり主人を駕籠に押し込めた。
 駕籠は、飛ぶがごとくに本宅へと走り帰った。

 妻から前夜に見たことの詳細を聞いて、好隣ははじめて大いに驚いた。
 しばらくは唖然としてものも言えなかったが、やがて涙を流しつつ、打ち明け話をした。
「我が命は、まさに尽きようとしている。いまさら包み隠すべきでないから、なにもかも話そう。
 我は若いとき、京都の剣匠 関なにがしの家に仕えていたが、なにせ花の都のこと、春は東山の桜をたずねて遊里島原の色香に惹かれ、秋は桂川の紅葉を眺めて祇園の風情を慕った。日がな尽きない興をもよおし、夜となく昼となく女人の寝間の内で浮かれ遊んで、月日の流れるのも気づかぬほどだった。
 あるとき遊郭で、芳野という遊女と親しみ、互いに深く誓い合う仲となった。季節を重ねるうちにいっそう想い合い、たとえようもない愛執の情にひたった。そんなことだから、鍛冶の修業など忘れ果て、ついに師の怒りにふれて放逐されてしまった。それでも芳野のことが忘れられず、絶えず通い続けるうち、いつしか芳野は風邪をこじらせて床につき、日ごと病が重くなった。昼夜そばを離れずさまざまに医療を尽くしたが、しだいに弱っていったから、心は焦り惑うて、神に祈り仏を拝み、ひたすら芳野の癒えることを涙ながらに乞い願った。しかし、死神が付きまとって誘引し、無常の風が吹き来るままに、芳野は十八歳のある暁、空しく果ててしまった。我が精神は狂気のごとく乱れ、亡骸を抱いて紅涙を絞ったが、どうなるものでもなく、枕辺に残った薬がただ恨めしかった。悲しんでばかりもいられないので、郭の主人と相談のうえ、鳥部野で火葬して一片の煙となした。むろん相応に弔いもし、墓の供養も怠らなかった。
 四十九日の忌日には、朝早く起きて芳野の墓に参った。香花を手向けようとすると、墓標の上に一匹の蛙がいて、我が顔をじっと見つめ、両眼からとめどなく涙を流した。不思議なことと思ったが、翌日また行ってみると、蛙はその場を去らずにいて、やはり我を見て涙を流した。これは、在りし日々の交情に心を残して死んだ芳野の幽鬼が、蛙に変じたものだろうか。それならそれでよい。二世を誓った女と、その死後に再びこの世で逢うことは、漢の李夫人が武帝にまみえ、楊貴妃が玄宗に逢った例と同じだ。そこで、蛙に向かってさまざまに囁きかけ、寂しい、哀しい…と日ごろの情を訴えると、蛙の姿はかき消えて、その後再び見ることはなかった。
 やがて故郷へ帰り、老親から家を継ぎ、おまえを妻に迎えて年月を重ねた。芳野のことも、諺にいう『去るもの日々に疎し』で、思い出すこともなくなった。ところが先ごろ、路傍で出会った女にふと心が迷った。恋慕のきずなは切ろうにも切れず、煩悩の火は払ってもまた燃える。姿を見ない夜がつらく、逢えない夕べを怨み嘆く心は、以前に芳野と契ったころと少しも変わらない。きっとあの女が生まれ変わって、再び我にまみえたのだろう。だとすれば、たとえ二度と別荘へ行かなくても、死霊の執心によって、いずれ我が命は失われよう」
 好隣は鏡をとり、はじめて自らの顔かたちの衰えようを見て、そのあさましさにため息をついた。
「この様子では、黄泉への道も遠くあるまい。ともあれ、この先の身の上を占ってみよう」
 そして衣服をととのえ、ようよう立ち上がって、家人に助けられながら、市中の易者の店へ行った。

 易者に好隣は自分の干支を告げ、占いを頼んだ。
 得られた結果は「履の卦」であった。いわく「虎の尾を履(ふ)む、人を咥えず」。易者は判じた。
「危ういところだ。しかし、占いに現れた形は、悪いものではない。今宵、あなたの家に客がある。それが吉をもたらす。客が怪を除いてくれるだろう」
 好隣は少しほっとして、急いで家へ帰ると、暮れ方に一人の侍が来た。
「それがしは、東国のさる侯家に仕える平侍で、曽根平内という者です。主家の用で西国へ赴く途中、日暮れとなり、宿のあてがありません。こちらに一夜泊めていただけませんか」
 この客だと思った好隣は、ただちに座敷に通し、家人に指図して酒・肴・飯を小ぎれいに調え、丁重にもてなした。
 客は大いに喜んだが、もとより田舎侍だから礼儀も知らず、出されたものを飢えた鷹のように食べ尽くし、すっかり酔って寝床に横たわると、たちまち牛のごとき鼾をかいて寝入った。
 好隣は案に相違して、落胆した。
「この客を当てにして、妖怪を除き災いを免れようと思ったが、なんと正体なく酔い臥してしまった。どうしたらいいのか」
 心配しても今さら仕方ないので、多くの燈火を白昼のごとくともし、客の傍に臥して様子をうかがうことにした。

 夜半のころ、一陣の暴風が吹き通るとともに、戸外に物音がして、
「薄情な男よ、どこにいる。なにゆえわたしを棄てたのか。おお、うらめしい男よ」
と呼ばわる声が、軒端の嵐のごとくに激しく耳元に響いた。
 好隣はもちろんのこと、家内の男もみな、胆を潰して驚き騒いだ。
 客を呼び起こそうとするに、はや化け物は迫り来て、戸の隔てなどものともせず、蹴倒して部屋に飛び入った。
 その瞬間、はっしと響く音がして、客の枕元の袋の中から、一筋の小蛇が現れた。鱗は金銀珠玉のごとく輝き、紅の舌をひらめかせて、ただひと呑みと化け物に攻めかかる。
 たちまち色を失った化け物は、慌てて外へ逃げだした。小蛇は風のごとく素早く追いかけ、追い回す。ついに化け物に飛びかかり、鮮血がさっと走ったと見えて、どちらの姿も消え失せた。ただ一振りの刀だけが、あとに残されていた。
 そのとき客は、遅まきながら物音に驚いて目を醒まし、枕元を見て、
「わが身命を捧げた宝は、どこにある。誰か盗んだのか」
と、寝間を捜し、戸外を探し回った。落ちている刀を見つけて鞘に納めると、袋の中にしまって、包みを枕にまた眠りこんだ。
 好隣が小蛇と思ったのは、客の刀だった。

 やがて、朝日が東の窓を照らした。
 家じゅう集まって戸外を調べると、血がおびただしく流れていた。血の跡を追って行くと、別荘に至った。
 座敷に入って見たら、大盥ほどもある蛙がつくばっていた。頭脳を裂かれて、朱に染まって死んでいた。みな大いに驚き、穴を深く掘って、蛙の屍を葬った。塚を築いて、「蛙塚」と名づけた。

 好隣の家に、もはや怪異は起こらなかった。夫婦の喜びはこのうえなく、客の曽根平内を数日逗留させ、もてなしに心を尽くした。
「平内どの、あなたの所持する刀は、どんな名工の作なのですか。我も昔は鋳剣を学び、あまたの剣を見ましたが、いまだあれほどの奇瑞がある剣のことを、聞いたことがありません」
と尋ねると、平内は錦の袋を開け、一振りの刀を取り出して好隣に見せた。
 それは銘もなく、乱れ焼きの刃文(じんもん)はあるけれども鉛刀(なまくら)に等しい鈍剣で、優れたところなど微塵もなかった。
 意外さに驚き、不審が晴れない好隣に対し、平内は語った。
「これは昔、都に名高い刀鍛冶 関なにがしが鍛えた刀なのです。それがしは当時、山崎の里の農家の作男でしたが、関氏の剣のことを聞き及んで、ぜひ一振りを得たいとの望みを抱きました。それからというもの、耕作の合間に薪を伐り、荷を担うなど、しばしも休むことなく人の仕事を受けて賃金を得ました。家にあっては、冬夜の厳寒も単衣で凌ぎ、三度の飯を減じ、春の日長を飢えに堪え、夜は月下に縄をない、朝は星のある頃から起き出しました。そうして三年の間、風雨も雷電も寒暑も厭わず働いて貯えた十金の価で、ようやく手に入れた剣なのです。
 その後は、身に添う影のごとく大切に携えて、深山に入るときに魑魅魍魎の恐れがなく、暗夜に行くに狐狸盗賊の難を逃れてきました。それがしの精神は、ひとえにこの剣あってのものです」
 好隣は、かつて貧しい男を欺いて、市場で買い求めた鈍刀を与えたことを思い出した。このたび妖怪に祟られ、危うく命を失うところだったのは、かの男が三年辛苦してやっと貯えた十金を貪り取った報いの罰だったと気づいた。
 しかし、今は曽根平内と名乗るその男が誠心から名剣と信じた精神が鉛刀の切っ先に入り、奇瑞をあらわしたことによって、好隣は万死を免れた。まさに古今未曽有の奇事と言えよう。

 好隣は、その昔に欺いて鈍刀を売ったことを打ち明け、詫びた。そして、
「あなたが本当の師の剣を望まれるなら、我の所持する一振りをお譲りしよう。これこそ関なにがしが百日注連(しめ)を張り、精進潔斎して鍛えた名作です。とはいえ、あなたの鉛刀の奇瑞には及びません。でも、鉛刀でさえ精神が凝れば奇瑞があるのだから、まして名剣ならなおさらかもしれません」
と言って、価は要らないと平内に与えた。
 また、かつて欺き取った十金を返し、さらに五十金を贈り、
「あなたは、わが再生の親ともいうべき人だ」
と、夫婦ともに厚く感謝した。
 平内も、不思議のことに遇って、ついに本当の名剣を得たことを、ひとかたならず喜んだ。
 それから別れを告げて出発した。
あやしい古典文学 No.1851