『異国物語』「烏衣国」より

烏衣国

 その国の人は、みな黒い衣をまとう。頭から大きな黒布をかぶり、その布丈は膝を隠し、腕を隠す。
 漢人と対するときはそっぽを向いて、己の顔を見せようとしない。もし強いて顔を見たならば、
「我が顔は断じて人に見せないのだ」
と怒って、ただちに見た相手を殺す。その後、死体を草で覆い隠す。

 物を売るときにも、商品を覆い隠して行う。
 もし支払いが少なかったら、これまた相手を殺す。
あやしい古典文学 No.1857