『異国物語』「沙弼茶」より

沙弼茶国

 この国は、昔からこのかた他国人が辿り着くことがなかった。ただ一人、聖人徂葛尼という人だけがこの国に渡って、文字を教えたと伝えられる。

 そこは地の西の果てなので、太陽が間近で沈む。そのとき、日没の音が雷鳴のごとく響き渡って凄まじい。
 それゆえ国王は、常に城の上に数千人を集めて、角笛を吹き、鐘を鳴らし、太鼓を打って、日没の音を紛らかす。そうしないと、女子供は皆おびえて死んでしまうからだ。
あやしい古典文学 No.1861