津村淙庵『譚海』巻之九より

浮田つなぎ田

 駿河の富士の麓の村には、「浮田つなぎ田」ということがある。
 長雨の時には、村じゅうの田んぼが浮いて流れるので、繋ぎ留める必要がある。太くて長い竹を、田んぼごとに深く刺しておくと、流れることはない。
 これを「つなぎ田」という。

 それにしても、この地に限って田んぼが浮いて流れるのは、不思議である。
 「浮島が原」という地名もあるが、こんな場所だからその名が付いたということだ。
あやしい古典文学 No.1862