『異国物語』「長人国」「小人国」「交脛国」より

長人、小人、交脛人

 「長人国」の人は、身長が十メートルくらいある。
 むかし、明州の商人が航海しているとき、霧深く風荒く、船の進路が分からなくなった。
 やっと霧が晴れて風がやんで後、一つの島に着いた。
 上陸して薪を集めているところに、突然一人の長人が現れて近づいてきた。その速さは飛ぶかのごとくだ。
 商人らは驚き恐れて逃げまどい、どうにか船までたどり着いた。長人は追ってきて、海に駆け入った。
 船から強弩で矢を射かけ、長人が怯むうちに、島から遠く逃れることができた。

     *

 「小人国」の人は、身長が三十センチに満たない。
 しょっちゅう飛んでくる海鶴が、ややもすれば手ごろな食物と見て、人を呑んでしまう。
 それゆえ、人々はいつも大勢で群れ連なって道を行く。

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 「交脛国」の人は、両足がもつれて、互いに巻きついている。
 しかし、彼らはその足で、つむじ風のごとく爆走する。
あやしい古典文学 No.1873