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進藤寿伯『近世風聞・耳の垢』より |
角二つの蛇 |
安芸の国、熊野村の近くの御園生村という所に、そこそこの暮らしの百姓があった。 去年、その家の前の柿の木で婆が首をくくって死んだが、この春になって、頭に角が二本ある三尺ほどの赤い蛇が出た。 蛇は樹上にいて、人の害になるわけではないけれども、目障りなので取り捨てた。しかし、四度まで捨てても、また元の場所に戻ってきた。昼は出歩き、夜は柿の木に巻きついていた。 ある者がこの蛇を借りて、忠海(ただのうみ)の龍泉寺の開帳で見世物に出した。客は大入り満員だったという。 |
あやしい古典文学 No.1879 |
座敷浪人の壺蔵 | あやしい古典の壺 |