森島中良『万国新話』巻之一「父母を喰う話」より

父母を喰う話

 韃靼国の東北の住民は、父母がまさに死のうとする時、ただちにこれを殺して喰う。

 それは、親に受けた恩愛をおもえばこそのことである。
 死して後、遺骸を荒野の果てに葬送し、暗く冷たい土の下に埋め去るのは、いかにも忍びない。よって、腹中の葬るのだという。
あやしい古典文学 No.1889