森島中良『万国新話』巻之四「死人の首を替ふ」より

死人の首を替える話

 渤泥(ボルネオ)の「イリンカツト」の地では、親が死ぬと首を切り、他の人の首を死骸に接ぐ。男には女の首、女には男の首を接ぐ。
 その後、手厚く葬る。接ぎ首をしないと、大いに世間の評判を落とすそうだ。

 裕福な家は、あらかじめ首を人から買っておいて、接ぎ首に備えている。
 貧乏で首を買えない場合は、死刑になった罪人の首を貰い受けて間に合わせる。あるいは、よその土地へ出かけて辻斬りをはたらき、その首を持ち帰って葬礼に供するという。
あやしい古典文学 No.1890