勝部青魚『剪燈随筆』巻之二より

人魚骨

 「人魚骨」は、排尿障害や食物を吐逆する病の妙薬として、近年流行している。腫病や食道狭窄の治療にも用いられるが、薬効は証明されていない。
 象牙のようなもので光沢はなく、多くは念珠の玉だ。丸くて、穴が通っている。

 人魚は、鯨の異名として『釈名』に出ており、「声が赤子のようだ」とはあるが、人の形をしているわけではない。『本草綱目』で『稽神録徂異記』から引用して、腰以下が婦人の形をしているというのは、また別物だ。
 我が国の人魚の絵では、腰以下が魚で、上半身は日本の女である。
 ちなみに地獄の絵だと、十王はみな中国人で、罪人はみな日本人だ。笑うべし。
あやしい古典文学 No.1893