松浦静山『甲子夜話』巻之十一より

兎がびびる

 わが領地である平戸藩内では、小麦畑に兎が入り、実を食って荒らすので、それを防ぐために、畑のへりに小さい木の立札を立てる。
 札には、
「狐の仕業だと、兎が言ってるぞ」
と書いておく。

 これで兎が畑に入らなくなる。狐が札を見て、『兎のやつ、ぬれぎぬ着せやがって』と怒って制裁を加えるのを、兎が恐れるからだそうだ。
 くだらない……。
 しかし、この札を立てれば兎の害が必ず止むというのだから、本当なら不思議なことだ。
あやしい古典文学 No.1897