池田正樹『難波噺』後編巻之五より

河童の害

 豊後には河童が多い。時としてたくさん集まることがある。
 そんなとき、人里では「客がある」と言って触れ歩く。それを聞くと家々では、小児などを外に出さないよう気を付ける。
 河童は集まって大いに荒れることがあるが、猿を見ると恐れて逃げるそうだ。

 河童は、よく女に魅入る。
 同国小浦というところに魅入られた女がいて、河童が常に来るから、仕方なく別に小屋を建てて、女を住まわせた。
 河童は夜ごと小屋に入りびたった。そのさい、鮮魚などを持ってきて、女に食わせた。穀類はあまり食わせないようで、女の姿はひどくやつれてしまったという。

 また、江戸目黒の蓮沼というところの女を、奉公人に抱えてはならないという話がある。
 その地には河童が棲んでいて、もし河童が魅入った女を雇い、主人が手を付けたりすると、大いに害をなすからだそうだ。
あやしい古典文学 No.1913