岡村良通『寓意草』下巻より

犬 vs. 狐

 羽鳥新兵衛という人の飼い犬が、勝手口に来て昼寝をしていた狐を見つけて、やにわに飛びついた。
狐はびっくり仰天して逃げ去った。

 二日ばかり過ぎて、今度は犬が昼寝をしているときに狐が飛びついた。犬は驚き惑うて逃げ走った。
 それからというもの、犬には狐が憑いて、屋根に登って立ち歩くようになった。
 しかし久しく憑くことはできず、また二日ほどすると元の犬に戻った。
あやしい古典文学 No.1931