『ばけもの絵巻』より

飯を食う化け物

 丹後の木津という村に、尼が庵を結んで独り住んでいた。
 ある夜、台所のほうで笑う声がするので、誰か来たのかと戸を開けて見たら、頭の大きさが四斗樽ほどもある化け物が、上機嫌で飯を食っていた。
 尼は気を失わんばかりに驚いて、二目と見ることができず、布団をかぶって震えていたが、やがて化け物は窓から出ていったらしかった。

 夜が明けて、このことを村の人々に告げると、威勢のいい若者たちが、正体を見届けようと、三四人、五六人と尼の庵に集まり、刀を抜いたりして、化け物の出るのを待った。
 しかしその夜は姿を見せることなく、かわりに天井を踏み轟かし、するとそこらにある物がひょこひょこと踊りだした。若者たちの手にしていた武器などは、いつの間にか取り上げられていた。

 この後は、みな恐れて、見届けようと言い出す者はなく、尼も逃げ去った。
 空庵となるとともに化け物も出なくなったことからすると、そもそも尼に何か因縁のある妖怪だったのだろう。
あやしい古典文学 No.1945