佐藤成裕『中陵漫録』巻之三「腐骨瘡」より

腐骨瘡

 腰から下、股・脛との間に、唐突に大きく腫れて、四五日のうちに破れ、膿汁数升を出す腫物が生じる。
 治療法は、毒消し薬を飲み、膿を吸い出すこと。膏薬を張るのもよい。しかし、中風・リウマチなどの類の病だから、軽くて一年、重ければ三年かけて、やっと治癒する。

 およそ二年も過ぎると、腫物の口から骨が出ることがある。腫物の大小によって二寸から三寸くらいの骨が少し頭を出し、日ごとに長く出て、ついに抜けて落ちる。
 少しも驚くことはない。膿によって内の骨が朽ちて出るのだ。このとき、鮑ならびに昆布を朝夕のおかずとして煮て食えば、かくべつ早く骨が抜け出る。
 この腫物は、医書に「腐骨瘡」として載るものである。
 昨今の外科医はあれこれ難しく言い立て、種々の療治を施すが、それでは癒えない。これはまず、人の口で膿を毎日吸い出すよりほかない。内深くにあって出ない膿のために、骨が侵されて朽ちるのだ。膿さえ早く取り去れば、早く治る。

 腫物が癒えた跡は、多くの場合痺れて、感覚がない。これを医書『千金方』では「死肉」と呼んでいる。とはいえ、生涯にわたって何の害にもならないものだ。
 筆者の友人もこの腐骨瘡を患って、三寸から五寸の骨十数枚を出した。今は癒えて、少しの障りもない。
あやしい古典文学 No.1957