椋梨一雪『古今犬著聞集』巻十「節木の中の郭公の事」より

冥土鳥

 信州高遠の藤沢作右衛門という人が、冬のさなか、下人に薪を伐り出させたとき、木の幹の空洞から、ホトトギスの死体が見つかった。
 作右衛門は『これは薬の材料になるだろう』と思って、箱に入れてしまいこみ、それきり忘れてしまった。
 翌年の二月末、ふと思い出して箱を開けたところ、かのホトトギスが飛び出して、いずこへともなく羽ばたき去った。
 この鳥は、秋から後、春までは、朽木などの内に隠れているものらしい。古歌にも、こう詠われている。

  おく山の朽木にこもるホトトギス 春をまちてやねには鳴くらん

 ホトトギスは「冥土の鳥」などと呼ばれる。
 思うにそれは、春になると死から蘇ってくる鳥だということであろうか。
あやしい古典文学 No.1959