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| 鈴木牧之『北越雪譜』初編巻之中「狐を捕る」より |
狐を獲る |
| わが里には、狐を獲る方法がさまざまある。その一つに、手を懐にして獲る方法がある。 雪国に春の日差しが差してくる頃には、積もった雪も昼間は柔らかくなる。そのとき猟人は、夜な夜な狐が徘徊する場所に、麦などを搗く杵を雪面に押し入れて、二つも三つも杵型の穴を作る。 夜になると穴が凍って、岩の穴のようになる。その周囲に、狐が好む油滓(あぶらかす)などを撒き、穴にも入れておく。 人が寝静まったころ、狐が来て、撒いた餌を食い尽し、なお満ち足らず、穴にあるのも食おうとする。身を縮め、頭から穴に入って、中の餌を食い尽くすが、さて出ようとすると、尾がわずかに出る程度に作った穴だから身動きが取れない。 雪は夜が更けるにしたがってますます凍り、狐の力では穴を壊すこともできず、出よう出ようともがいて疲れはてる。 その時点で猟人は、水を汲んできて穴にそそぐ。凍った雪の穴だから水はなかなか洩れず、狐は尾をふるわせて苦しむ。猟人は近くにいるが、狐は死ぬとき必ず臭い屁をひるので、注意して避けねばならない。 やがて狐が尾を動かさなくなったのを見て、溺死したのを知り、尾を掴んで大根を抜くように狐を獲る。穴は二つ三つ作っておくので、運がよければ二匹・三匹と引き抜くこともある。 これは、凍って岩のようになった雪の穴だからできることだ。土の穴なら彼らの得意とするところだから、容易に逃げ去るにちがいない。 あくまで雪国に限った猟なのである。 |
| あやしい古典文学 No.1960 |
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