『本朝故事因縁集』巻之四「伊豆国無名魚」より

無名魚

 伊豆国伊東庄の仏光寺の庭に、池がある。その池の中に、長さ三尺の魚が忽然と生じた。
 全体は鯉のようで、鱗は瑠璃色。狼のような牙があり、食物を投げ入れると、音を立てて噛み砕いた。

 この魚の名を知る人は誰ひとりなかったので、「無名魚」と呼ばれた。
あやしい古典文学 No.1963