神谷養勇軒『新著聞集』第七「雁風呂」より

雁風呂

 秋、北方の地から飛来する雁は、くわえてきた木の枝を奥州外ヶ浜に落としておく。
 枝は雁が海を越えるとき、海上に浮かべて羽を休めるためのものなのだ。だから、春になると、またその枝をくわえて北へ帰る。

 しかし春、浜には多くの木の枝が残る。それを拾い集めて風呂を焚き、妙薬として諸人の沐浴に供する。
 『雁風呂』と呼ばれ、捕らわれたり死んだりして帰れなかった雁の弔いでもある。
あやしい古典文学 No.1964