荻生徂徠『飛騨の山』より

異種交雑

 牛と驢馬が交わって、騾馬を産むということがあるらしい。

 上総に住んでいたとき、土地の人が語った。
「漁をする浜辺は人里から遠く、常には住む人がいない。網などを入れ置き、また大勢で網を引くときの食い物を用意などをする場所として、仮小屋を作り、ふだんは番人として一人か二人を置いている。
 その番人の男が、雄犬を飼った。
 そのあたりに犬の仲間がいなかったので、雄犬はやむをえず狐を妻にして、子を産ませた。子は、いちおう犬ではあったが、顔が細くて尾が太く、狐にも似ていた」

 犬と狐は極めて仲が悪いものなのに、性愛の情がはたらけば、こんなこともあるものなのだ。騾馬の父母の件も、なるほど納得できる。
あやしい古典文学 No.1978